賛同しないがコミットする

賛同しないがコミットする

Clock Icon2024.03.02

「賛同しないがコミットする」とは?

賛同しないがコミットする」は英語で「Disagree and commit」や「Disagree, but commit」と呼ばれます。
「賛同しないがコミットする」は、意思決定プロセスにおいて、関係者の間で意見が分かれた際に使用される概念です。組織の活動において、明確な答えがないようなテーマに取り組む場合、多様な意見を率直に交換することは重要です。一方で、多様な意見があっても最終的な結論は一つです。複数の意見を取り入れることはあるかもしれませんが、すべての意見が取り入れられるとは限りません。つまり、結論に賛同できない人が発生することもあります。この場合、結論をもとに業務を遂行していく上で関係者の衝突が発生しては思うように物事が進みません。
そのため、どの意見が採用されたとしても、決定した以上はコミットしていくスタンスを全員が取れることが大切です。そのためにも議論の段階で遠慮なく異論を伝えていくことが大切ですし、異論を話し合える環境(つまり心理的安全性がある環境)であることが大切です。

「賛同しないがコミットする」ことの難しさ

「賛同しないがコミットする」ことは大切であるものの、完璧な実現には困難が伴います。
以下に、難しさの要因をいくつか挙げます。

固定観念やバイアス

人によって過去の経験や信念へのこだわりが強く、新しい情報や異なる視点を受け入れにくい状況があります。固定観念バイアスに当たるようなものです。今話しているテーマが本来「明確な正解があるとは限らない」はずのお題であっても、自分の考える答えが唯一の正解であり、それに従わない他者を敵とみなしてしまうようなケースです。
例えば、しっかり計画して物事を進める考えもあれば、まずは小さく試して経験から学ぶ考えもあります。どちらが状況に適しているかはビジネスモデル、事業領域、個別業務の特性によって異なります。過去の所属企業はじっくり計画する文化であり、それに適したビジネスだったため、それが正解だと思っていた人がより変化が激しく正解が不明確なビジネスに関わる様になった場合、以前の環境の答えを固定の正解として捉えていると、現在の環境とズレた答えに固執することになります。

情報の格差や差異

それぞれが持っている前提情報の違いや視野・視座・視点の違いから、他者の意見に賛同できないという状況が生じることがあります。
例えば、ビジネス全体の流れに関する前提を知り、その視野・視座・視点を踏まえて意見を出している人と、自分の担当範囲の最適化のみを考えて意見を出している人の相違などです。

誤解

意思決定のために伝達された情報を誤解して受け取った影響で、ズレた結論に至ることがあります。
このケースは最後まで丁寧にやりとりしてみたら、実は同じ意見だったということもありえる非常にもったいないケースです。
例えば、心理的安全性に関する議論をしていて、Aさんは「言いにくいことが言える環境を作る」という本来の意味で捉えていて、Bさんは「安心な場所」という誤解をしていたとすると、それぞれの意見にズレが発生するでしょう。仮に心理的安全性の意味を誤解していたBさんが正しい意味を理解したら、Aさんと同じ意見に至るかもしれません。

価値観の違い

個人の意見や価値観が周囲と一致しない場合、意見の不一致が生じる可能性があります。
例えば、「採用は全員で行うべきもの」と考えている人と「採用は採用担当者が行うべきもの」と考えていて、その価値観を譲る気がない場合、意見のズレは平行線です。

人間関係の影響

人間関係の複雑さや個人間の相性の問題が、意見の不一致を引き起こす可能性があります。特定の人物との関係が良好でない場合、その人物の意見に賛同することが難しい場合があります。
人間関係と仕事に関する意思決定を区別できる人はいいのですが、そうではない人もいます。
その意味では、関係性は良好であるに越したことはありません。関係性の維持も仕事の一部です。

補足 - リーダー・メンバーの間における発言機会の差異

ここまでは関係者が議論に参加できる場合を前提とした内容でしたが、実際は関係者の全員が常に意思決定に参加するとは限りません。お題によって、ある程度素早く意思決定を進めるには、マネージャー・リーダーなど限られた関係者で意思決定をまとめる事が必要になります。
この状況で意思決定に関与していないメンバーに対する対応としては
  • 意思決定に至るまでの議論や結論の背景を共有する
  • メンバーからのフィードバックの機会を設け改善につなげる
  • 意思決定への不満が残るメンバーに個別で理解を促すためのサポートをする
などの方法があります。
その上で部門やチームの方針に継続的に強く関与したいというメンバーがいる場合、実績を元に信頼を積み重ね、マネージャーやリーダーになることを提案する方法もあるでしょう。

まとめ

「賛同しないがコミットする」についてまとめました。
仕事において、すべての意思決定が全員同じ意見で一致するとは限りません。
意見が異なるたびに不満や衝突が発生していては、チームの活動が思うように進みません。
一度決定に至ったら、その決定事項を前提にどのように最大の成果を出すことができるか考え、次のふりかえりのタイミングで方向転換や改善をできるとよいでしょう。

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